いも類文化学ノート
『アメリカ、サツマイモ事情』

The ABCs of
Sweetpotatoes in the USA

目次へ

Table of Contents

『子鹿物語』とスイートポテトポン

米国のサツマイモの本場は東南部地方である。10数年前、日本のテレビで放映された連続漫画『子鹿物語』は1938年に書かれた同名の小説に基づいている。この小説に登場する貧しいバックスター家はフロリダ州に住み、11月のサツマイモ収穫から半年間程、毎日、3食サツマイモを食べていた。主食はサツマイモの他、小麦粉やトウモロコシ粉から作ったパン類である。バックスター家では、サツマイモを焼いて食べることが多かったが、「スイートポテトポン」というごちそうもたまにあった(注1)。『子鹿物語』の日本語版にこれが「サツマイモの焼きパン」と訳されているが、実は菓子の一種である(注2)。スイートポテトポンは東南部の料理の一つで、家庭により作り方が多少異なる。以下は一つの例である。


『スイートポテトポン』

材料

サツマイモ生おろし カップ2 1/2

sweetpotato pone

黒みつ カップ1
玉子 2コ
牛乳 カップ2
とかしたバター 大サジ1
粉ショウガや擦ったオレンジの皮 小サジ1
黒砂糖 大サジ1
シナモン 小サジ1/2

作り方

黒砂糖とシナモンを除き、材料を全部よく混ぜて、油をたっぷり塗った天火皿に入れ、190℃程の天火で25分焼いてから、黒砂糖とシナモンを上に振りかけ、さらに20分程、焦げ目が付くまで焼く(注3)。

以上は『子鹿物語』の著者ローリングズ氏による作り方だが、『子鹿物語』に登場するバックスター家が食べていたサツマイモポンより贅沢である。


バックスター家風の素朴な『スイートポテトポン』

材料

サツマイモ生おろし カップ2
自家製糖蜜 カップ1
豚油 大サジ3
小麦粉 大サジ2
重曹 小サジ1/2
適量

作り方

材料を全部よく混ぜて、ゆっくり、焦げ目が付くまで焼く(注4)。

ローリングズ氏が紹介したスイートポテトポンの作り方では、米国で多く食べられている高カロチンのサツマイモとなっている。『子鹿物語』に登場するバックスター家の自家製サツマイモがどの種類だったかヒントはないが、サツマイモがバックスター家の重要な主食の一つであることから、甘味がそれほどない品種ではないかと想像する。


注1:Rawlings, Marjorie Kinnan, The Yearling, Scribner Classic Collier Edition, reprint of 1938 edition, New York, 1986, pp. 12, 118, 143, 196, 215, 264, 265, 301, 308。

Jody Baxter with Yearling

Rawlings, Marjorie Kinnan, The Yearling, Scribner Classic Collier Edition, reprint of 1938 edition, New York, 1986より。Edward Shenton氏昨。

ローリングズ記念公園(フロリダ州立公園)Marjorie Kinnan Rawlings State Historic Site(オレンジ色のところは、デード郡で、フロリダ州のサツマイモの最大産地である。

注2:ローリングズ作、『子鹿物語』(上)、大久保康雄訳、偕成社、東京、1983年、26ページ。

注3:Rawlings, Marjorie Kinnan, Cross Creek Cookery, Charles Scribner's Sons, New York, 1942, pp. 183-185。

注4:同上, p. 184。


Copyright by Barry Duell, 1999.


目次へ

Table of Contents