いも類文化学ノート
『アメリカ、サツマイモ事情』

The ABCs of
Sweetpotatoes in the USA

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サツマイモの箱のデザイン・アート

サツマイモの箱のデザイン・アートの始まりは100年ほど前である。1880年代、カリフォルニア州の農産物を鉄道で、東の市場へ送ったとき、木箱を使い始めた。市場の客へ、アピールできるように、木箱に華やかなリトグラフ印刷ラベルを使う習慣になってきた。サツマイモの場合、木箱に、50ポンド(約23kg)のイモが入り、ラベルの寸法は約23cm×23cmであった。

"Vitamin" sweetpotato box label サツマイモの木箱のデザイン・アートの例。ルイジアナ州産の農場のラベル。このビタミン・ブランドのラベルはサツマイモ資料館(埼玉県川越市)で展示中。

大手のラベル会社がカリフォルニア州サンフランシスコ市にあり、他に、東南部にも少々あった。リトグラフ印刷ラベル付きの木箱はサツマイモの他、様々な農産物のためのものであった。農家や農業組合の予算により、ラベルのデザインが複雑であったり、簡単であったり、また、色が多かったり少なかったり、様々だった。ラベルには、サツマイモが何かの形で現われてくる。一番簡単な場合は「サツマイモ」と文字で書くだけである。商品名、農家や生産者の名前と連絡先、その農家や生産者のサツマイモブランド名、箱の重量、等級などである。もう少し複雑になると、サツマイモの楽しいデザインや自分のサツマイモの一言宣伝である。ラベルを見ると、その時代の文化や考え方も多少わかる(注1)。

1950年代から、木箱が少しずつ段ボール箱に変わってしまい、1970年代の初めの頃、木箱とそれに貼るラベルは消えてしまった(注2)。段ボール箱は40ポンド(約18kg)入り(縦25cm×横43cm×奥32cm)で、以前の木箱と同様、様々なデザインが付いていた。ただし、1枚のラベルを貼る代わりに、段ボール箱全体に直接印刷されている。

Southern Belle brand sweetpotato box

「Southern Belle」は米国で「美人」を表わす代名詞のように使われる言葉。日本の「秋田美人」と同じような意味がある。サツマイモを食べて美人になろうという願望があったのだろうか。ルイジアナ州のクウィバドー農場のブランド。

木箱も、段ボール箱も、卸売りの段階でしかこのデザイン・アートは見られない。一般消費者へ売るために、小売店がイモを箱から出してしまうので、一般消費者がこの美術品を見る機会はほとんどない。


注1:参考文献1、8、9、11、39ページ。

注2:同上、39ページ。


参考文献:
1)Medley, R. John, Jr., Images of the Sweet Potato, An American Art Form, self published, 1994.


Copyright by Barry Duell, 1999.


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