いも類文化学ノート
『アメリカ、サツマイモ事情』

The ABCs of
Sweetpotatoes in the USA

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ワシントン大統領とサツマイモ

George Washington米国の初代大統領ジョージ・ワシントンの屋敷(ヴァージニア州マウントバーノン)には、200年前の生活の様子がそのまま保存されている。その家庭菜園では、今でも当時の野菜が栽培されている。つまり、200年前に作られていた野菜すべてが、そのまま作られ、サツマイモもその中に含まれている(注1)。

ワシントン大統領の夫人マーサの料理集も残っている。先祖、代々、伝えられたものである。これは当時、英国の裕福な家庭の習慣で、北米へ移住したマーサ夫人の先祖などもその習慣を受け継いだ。こういう本は手書きで、娘が母親の手書きの料理集をまた手書きした。母親の本は自分の母親の料理集以外からも取り入れられている。友人や親戚や雇い人などからも作り方を取り入れている。最初から写した作り方と、その後取り入れた作り方を分類別で整理することも多かった。書き終わった本は娘の嫁入り道具にもなっていた。マーサ夫人の料理集が本人の手で写されたものではなく、おそらく、初めの夫の母親の写しのようである。つまり、17世紀の後半のもので、内容のほとんどが英国からの料理法のようである(注2)。

マーサ夫人の料理集に、サツマイモを使ったものがあり、それは、サツマイモの肉パイである。当時、ポテトが英語で、ジャガイモとサツマイモの両方の意味があったが、この肉パイのポテトがサツマイモと連想できるのはオレンジや葡萄などの果物がジャガイモより、サツマイモのほうに合うものだからである(注3)。残念ながら、ワシントン大統領夫妻が実際にどのようにサツマイモを食べたか記録にない。


注1:マウントバーノンは米国東海岸のヴァージニア州の北東部にある。ポトマック河畔で、ワシントン(米国の首都)にあるホワイトハウスより35kmほど南である。

注2:Hess, Karen, transcriber and annotator, Martha Washington's Booke of Cookery, Columbia University Press, New York, 1981, pp. 447-463。

注3:同上、84〜87ページ。


参考資料:
ヴァージニア州マウントバーノンで栽培した作物について(主な作物紹介のみなので、サツマイモは紹介されていない)。

マウントバーノンの家庭菜園について。

マウントバーノンの台所について。


Copyright by Barry Duell, 1999.


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