8ヶ国蔵相会議(イタリア、英、カナダ、独、日、米、仏、露)の8ヶ国の中でサツマイモをある程度食べている国は、日本とアメリカくらいである。しかし、これら8ヶ国で最も多く食べられているイモ類は、ジャガイモである。
アメリカのサツマイモと言えば、主流は高カロチンが含まれているサツマイモである(注1)。平均的に、日本より食べる量は少ないが、11月の第4木曜日の「感謝祭」にはサツマイモが必ず七面鳥と一緒に食卓に出るし、クリスマスや正月などのごちそうとして出ることも多い。
ベークポテトの代わりに天火で焼いたサツマイモの食べ方が1番人気のある食べ方である。牛肉と一緒に食べるのは少なく、チキンやハムや七面鳥と一緒に食べるのが普通。
サツマイモをよく洗って、バターを塗り、天火で焼く。柔らかくなる前に破裂しないように串で刺すのがコツである。(写真提供はノースカロライナ州サツマイモ振興会) |
次に多い食べ方は洋風大学イモ。作り方はたくさんあるが、以下は調味料の少ない、1つの例。
材料 |
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サツマイモ | 1.4kg分 | |
バター | 小サジ1 | |
塩、胡椒やパプリカ | 少々 | |
黒砂糖やメープルシュガー | 大サジ2〜3 | |
バター | 大サジ2 | |
リンゴ汁や水 | コップ1/3 | |
作り方 |
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イモを少し固めに蒸して、皮をむき、たてに、1/4に切る、33cm×23cmの天火皿に入れ、バター小サジ1や調味料をふる。さらにバター大サジ2を加え、リンゴ汁や水を注ぐ。ふたをして、180℃の天火で45分間程焼く(注2)。 |
東南部地方は、他の地方より、サツマイモ料理が多少豊富である。人気があるものの一つはサツマイモパイである。以下は『風と共に去りぬ』という長編小説に登場した主人公の1人、メラニーのサツマイモパイの作り方と言われている(注3)。
材料 |
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つぶして蒸したサツマイモ | カップ2 | |
黒砂糖 | カップ1/2 | |
塩 | 小サジ1/4 | |
シナモン | 小サジ1 | |
ナツメッグ | 小サジ1/2 | |
玉子の黄身 | 4コ | |
とかしたバターあるいはマーガリン | カップ1/3 | |
牛乳 | カップ2 | |
玉子の白身 | 4コ | |
作り方 |
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サツマイモ、黒砂糖、塩、シナモン、ナツメッグを混ぜる。黄身をよく混ぜてから、バターあるいはマーガリン、イモなどとよく混ぜる。さらに、牛乳を入れ、混ぜる。白身がフワフワになるまでかき混ぜて、静かにそれをイモに流し込む。生パイの皮が敷いてある直径23cm程のパイ形に注ぐ。220℃程の天火で15分間焼き、さらに190℃程で25分間、具が固まるまで焼く(注4)。 |
米国では、サツマイモパイの調理法といっても、サツマイモとカボチャを入れ替えることが多い。調味料を使うことが多いので、サツマイモでもカボチャでも元の味はなかなかでき上がった製品に残らない。
和洋折衷の高カロチンイモ料理:
材料 |
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高カロチンイモ品種のサツマイモ |
適量 |
作り方 |
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日本のベニハヤトやヘルシーレッドなどの高カロチンイモ品種のサツマイモの皮をむいて、大きいイモを小さく切る。30分程水の中でアクをぬく。秋・冬なら3日間程、ヌカミソの中に漬け込んで出来上がり。薄く切って、よく洗い、絞り、醤油を少々付けて、ご飯と一緒に食べる(注5)。 |
注1:米国のスーパーや料理集にあるサツマイモは大ざっぱに2種類に分かれている。一つは高カロチンのもので、肉色がオレンジ色をしていて、甘味が強く、粘質のイモである。日本で栽培されている同種類の品種では、カロチンの量が多く含まれているベニハヤトやヘルシーレッドに相当する。この種のイモを使う調理法は A Sweetpotato Sampler というサツマイモ百科のホームページで様々みえる。
もう1種類の米国で食べられているサツマイモ類は日本で人気のある品種にある程度近い。肉は低カロチンなので、肉色が黄色や白で、高カロチンのものよりホクホクする。米国のサツマイモ生産の95%程度が高カロチンタイプだが、地方や民族により、低カロチンタイプを好むところもある。ただし、料理集には、ほとんど高カロチンタイプ向けの調理法しか載っていない。フロリダ州のマイアミ市周辺では、低カロチンサツマイモを好むカリブ海系や中南米系の消費者が大勢いるので、ボニアトという低カロチンサツマイモが好まれている。
スーパーでは、サツマイモの品種を分けるために、品種名を書かず、「Yams」(高カロチンのイモ)と「Sweet Potatoes」(低カロチンのイモ)で区別し、販売することが多い。左は「Sweet Potatoes」で、1kg約170円(1ドル110円の場合)。中央は「Yams」で、1kg約60円(普通の1/3程)。右はタマネギの袋詰めとばら売り。オレゴン州レイクオスウィゴ市にて。1999年1月。 |
注2:Rombauer, Irma S., Marion Rombauer Becker, Ethan Becker, Joy of Cooking, Scribner, New York, 1997, p. 428.
注3: Mitchell, Margaret, Gone with the Wind, first printed 1936, reprinted by Avon, New York, 1973.
このデザインは「風と共に去りぬ」のタラという南部の大農園の屋敷を思い出させる。クウィバドー農場のブランド。 |
注4:Gone with the Wind Cook Book, Pebeco Toothpaste, Bloomfield, New Jersey, USA, ca. 1939, p. 41.
注5:日本でのベニハヤトやヘルシーレッドなどの米国の高カロチンサツマイモに近い品種は手に入りにくいが、川越のサツマイモ資料館で見ることはできる。
連絡先:
サツマイモ資料館(開館時間)
〒350-1106 埼玉県川越市小室15-1
TEL: (0492)43-8243
FAX: (0492)41-7050
Copyright by Barry Duell, 1999.